酒蔵見学① ~静岡県・英君酒造~

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去る2023年1月25日(水)、静岡市清水区由比にある英君酒造を訪問しました。
英君酒造の始まりは明治14年(1881年)。
英君という名前は、明治時代に駿府(静岡市)に隠居していた、
でた主・徳川慶喜公にあやかって名付けられたそうです。

蔵に到着後、五代目代表の望月裕祐 社長に英君酒造の歴史を始め、
使用している原料米・酵母などの紹介から英君酒造が求める酒質についてご解説頂きました。

現在の製造の内訳は、
吟醸 8%、 純米吟醸 25%、 純米 62%、 本醸造 5%

原料米は、
山田錦、 五百万石、 備前雄町、 誉富士、 愛山、 渡船、 白菊
を使用しており、

酵母は、
静岡酵母
にこだわっているとのことでした。

また静岡酵母は、香り成分の特徴で言うと、
酢酸イソアミル
を生成しやすい9号酵母14号酵母
この二つの酵母に近い性質を持つとのことです。

望月社長より、
「静岡県で開発された酵母のみを使用し、蔵内から湧き出す井戸水でじっくりと醸しています。
高い香りによって甘辛苦渋酸を誤魔化さない自然な味わい、且つ爽やかな香味の優しいお酒を目指しています。食事の邪魔をしない、ではなく食事と共にお互いの良さを引き立て合うお酒が理想です。」
と、ご説明頂きました。

その後、実際にお酒を造っている酒蔵の見学へ。

 

まず目の前に飛び込んできたのは、
蔵の方々が洗米および脱水作業を行っている姿!
あちこち行ったり来たり忙しく作業を行っておりました。

米の吸水量は洗米後の浸漬蒸米の工程にも影響を与えるので、
忙しなく作業を行っているのも納得です。
真剣な後姿がカッコよかったです!

 

そして、蒸米工程についてご説明頂きました。
蒸米(むしまい)とはお米を蒸すことで、米のでんぷんを麹の酵素に分解されやすくする工程のことです。
米の種類気温湿度によって蒸し上がりの状態が変わるので、
結果をフィードバックすることで、毎日米の状態を観察して進めていくとのことです。
蒸米後は米の温度を下げる必要がありますが、
英君酒造ではダクトから外気を取り入れて、急冷させる工夫がなされているとのことでした。
蔵によって設備にも個性が表れて、試行錯誤をしながらお酒造りを進めているのがわかって面白いですね。

 

お酒造りにおいて重要な工程の一つとなる、米麹の製造を行う麹室。
米麹(こめこうじ)は米に含まれるでんぷん質を糖分に変換する役割を担います。

英君酒造では細かく工程を分け、何と麹室が3室も!

最初の部屋にて種麹を蒸米にふりかける作業を行い、
さらに温度・湿度が高い隣の部屋で麹菌の繁殖を促し、
より温度が高く乾燥している最後の部屋で米麹を完成させるとのことです。
部屋が乾燥していると米の表面が乾き、麹菌は米内部の水分を求めて中へ中へと成長し、
内部まで麹菌が繁殖した良い米麹になるそうです。

昔から蒸米は外硬内軟(がいこうないなん)が最適と言われています。

 

最後の部屋にて製造中の米麹。
部屋の温度は40℃近くまで上げているそうです。

 

ここは酒母室。
酒母(しゅぼ)とは、酵母の培地であり、お酒の元になる原液のことで、酛(もと)とも呼ばれます。
タンク内に米麹酵母を投入すると、麹菌が生成する酵素が米に含まれるでんぷんを糖化し、
それと並行して、生成された糖分が酵母の力によりアルコールに変換されます。

酵母の培養には2週間ほどの時間を要するそうで、
培養後にタンクに移し、お酒の醸造に移る流れとなります。

仕込み中の酒母がタンクの中に入っており、近づくと濃厚で甘い香りが漂ってきました!
英君のお酒で特徴的なフルーティーな香りを何倍にも濃縮したような香りでした!

 

お酒の醸造用の大きなタンクがたくさん!
手前の大きなタンクは6500 Lほどの容量があるそうです。
規模の大きさにビックリ!

こちらの部屋のタンクは主に純米酒や本醸造酒、その他料理酒などの製造に使われるそうです。

 

こちらは別の部屋にある、デリケートなお酒を仕込む2400 Lほどのタンクだそうです。
小さいタンクの方が温度がコントロールしやすいため、
繊細な味わいの吟醸や大吟醸クラスのお酒は、この小さいタンクにて造るそうです。
やはり吟醸や大吟醸は色々な意味で手間の掛かった、素晴らしいお酒なのですね。

 

こちらは仕込んだ醪を絞ってお酒と酒粕に分ける工程である、
上槽(じょうそう)=搾りを行う薮田式自動圧搾機(通称:ヤブタ)です。

搾りをうまく行わないと雑菌が繁殖してお酒にクセが付くらしいのですが、
こちらは最新式のヤブタだそうで、菌が繁殖しづらい布素材が使われているものだそうです。
またプラズマクラスターの空気清浄機を常備していて、空気中の雑菌も極力除去できるように気を払っているそうです。
そして部屋全体が冷蔵庫になっており、常に5℃付近でキープされているため、
お酒をフレッシュに保つことが可能だそうです!

設備の規模とお酒への愛情が深くて本当に凄いです!

聞いてみたところ、
「英君のお酒がとてもフレッシュですっきりキレがあるのは、
このしぼりの工程での鮮度管理の影響が大きいのではないか」

とのことでした!

スッキリ甘みがあるけれど重たくなくてキリっとしている、
素晴らしいバランスを持つ英君のお酒造りの謎が解けた瞬間でした!

 

こちらも瓶詰め前の重要な工程、お酒の火入れを行う設備になります。

火入れと冷却を連続的に行える「プレートヒーター」が導入されておりました。
これにより、火入れ後すぐに冷やして、そのまま瓶詰めが可能になっているそうです。

また写真右側に映っている装置は「窒素式の脱酸素装置」だそうで、
お酒に溶け込んだ酸素を窒素に置換して酸化を防止することが可能になっているそうです!

常に鮮度管理を意識し、最新鋭の設備を導入する意気込みに脱帽です。

 

見学を終え、お酒の試飲をさせて頂きました。
頂いたお酒は以下の種類です。

写真手前から
英君 純米吟醸 五百万石 R4BY(緑の英君)
・ 英君 純米吟醸 山田錦 R3BY(紫の英君)
・ 英君 純米吟醸 備前雄町 R3BY(橙の英君)
・ 英君 特別純米酒 誉富士 R3BY
英君 純米吟醸 山田錦 無濾過生原酒 R4BY(紫の英君:発売前のしぼりたて!)

緑の英君は、程よい控えめな甘みにスッキリ感、キレの良さが抜群!
※ ちなみにこちらの緑の英君(R4BY)は、前述の「窒素式の脱酸素装置」を初めて使用して製品化したお酒だそうです!
紫の英君は、華やかで旨味と甘みのバランスが絶妙。
橙の英君は、旨味がぎっしり詰まったジューシー甘口。
特別純米酒 誉富士は米の旨味を感じるキリっとした味わい。
そして何といっても紫の英君のしぼりたて
香りの強さが段違い!超絶フレッシュで、蜜のようなジューシーさ、ピッチピチのガス感!

どれもとっても英君らしいフレッシュでフルーティーな味わいでした!
とっても美味しかったです!

 

また、仕込み水として使用している2種類の水、
桜野沢の水
蔵内に湧く井戸水
の飲み比べもさせて頂きました。

硬度の違いが明確で、
桜野沢の水ミネラル豊富な味わい、
井戸水は柔らかくまろやかな味わいでした。
どちらも透き通った綺麗な味わいで美味しかったです!

沢山頂きまして、ありがとうございました!
ごちそうさまです!

最後に全員で記念撮影。
英君酒造の皆様、お忙しい所見学のご対応ありがとうございました。
こだわりの美味しいお酒をもっと沢山の方々に知ってもらえるよう、頑張ります!

 

<おまけ>
望月社長(笑)

 

執筆者: ヒデ