酒蔵見学⑥ ~群馬県・聖酒造~

Category:

今季から取引きをさせて頂くことになった、聖ならびにHIZIRIZM。

スタッフで試飲した印象は、
「何この香り?パイナップルみたい!!」
「凄く味がしっかりしてて、ガスも強い!」
「カプ系だけど甘くなくて、凄くキレが良い!」

など様々な驚きと発見があり、これまでに取引きをさせて頂いていた他の酒蔵のどのお酒とも被らない、独創性の溢れる味わいを感じながらも素晴らしくバランスの取れた、計算し尽くされた酒質の新たなトビラを垣間見ました!!

 

そんな訳で居ても立っても居られず、行ってきました!! 群馬県・聖酒造
日本酒造りの最先端を探る見学レポート、どうぞご覧ください!!

 

 

 

2024年5月29日。
群馬県渋川市にある蔵に到着し、さっそく酒蔵内の見学をさせて頂きました。

今回ご案内頂いたのは、杜氏の吉本寛(よしもと ゆたか)さん。
吉本さんから聖酒造の日本酒造りの方法やこだわりについて教えて頂きました!

 

 

まずは洗米と浸漬の工程から。

洗米には酒蔵ではお馴染みのウッドソンを使用されていました。

以前から気になっていた、
「洗米後のお米の吸水量はどうやって正確に測定するのか?」
という質問をしてみたところ、

「洗米後、米の表面に付着した余分な水分を脱水機(下写真)を用いて除去した後にお米の重量を測定することで、お米が吸水した実際の水分量を測定することができる」と、ご回答頂きました。

 

 

こちらが脱水機。

洗米機だけではなく脱水機を使わないと厳密な吸水量を測定できないのですね。
イメージしたお酒の出来上がりに近づくためには、細かい水分量も気にしないといけないと教わりました。
お米の吸水量はお米の種類によっても変えているそうですが、元々のお米が持っている水分量も毎回違うので、そちらも加味した上で洗米や浸漬の時間を設定しないといけないのだそうです。

今年は夏の高温障害もあり、お米がいつもよりも硬くて溶けづらく、お酒の味を濃くするのが難しかったそうで、浸漬時間を変更するなど、大変だったそうです。
ただ無理にお米を溶かそうとすると味が出すぎてしまって綺麗なお酒にならなかったり、また綺麗なお酒を造るために精米歩合を高くすると酒化率(1000kgのお米から造られる純粋なアルコール量の割合)が低くなってしまいコストが掛かるなど、味わいの担保と低コストの実現を両立することには様々な障壁があるそうです。。。

今年に限らず、これからはお米が硬く、溶けないのが当たり前になってくるそうなので、お米の出来具合に合わせて浸漬時間や仕込みの温度など、お酒の造り方を変えるように適応しないといけない時代になってくるとのことでした。

 

 

ここから酒母造りの話へ。

 

 

吉本さん曰く、綺麗な酒質を目指すために酒母およびタンクでの仕込みを低い温度にて行っているとのことでした。

そのために酒母造りの初期段階で水麹(水と米麹を混ぜたもの)を造りますが、まずこの水麹をしっかり冷やす必要があるため、出来上がった米麹を冷凍ストッカー(上写真)で冷やしておくそうです。
水麹を冷やしておかないと酒母の初期段階で既に温度が上がってしまい、イメージした造りからズレが生じてしまうので、暖かくなってきた時期には特に冷やすことが重要になるそうです。

また、水麹を冷やしておくことで掛米をある程度高い温度で投入できるようになるので、掛米を冷やす手間が省けて造りの効率が上がり、更に毎回同じ温度で仕込むことができるので、再現性の高い酒造りが可能になるという利点もあるそうです。

聖酒造では「ひとめぼれ」をたくさん使うので、米麹にしてストックしているとのことでした。

 

 

こちらは仕込み水用のチラー。

米麹と同様に、仕込み水もこちらを使用して事前に冷やしておくとのことです。
これら冷やした米麹と冷却水を使用して水麹を造り、酵素を溶かしたうえで酒母造りに臨むそうです。

 

 

こちらは冷却した仕込み水を溜めておくタンク。

 

 

ここは酒母室。

6月中旬に出荷予定の大人気のお酒「酒母活性酒」を造っている最中でした!
仕込みは9日間で、あと6日ほどで上槽予定とのことでした。
9日目には日本酒度-100、アルコール度数5%、酸度7~8の商品スペックとなるようにコントロールしているそうです。

精米歩合35%のひとめぼれから酒母を造り、タンク仕込みに移らずそのまま上槽した、少量生産でコストと手間暇の掛かった、まさにスーパープレミアムなお酒です!

 

 

こちらが酒母活性酒の酒母(=もろみ)。
精米歩合35%なだけに、粒がとても小さいです。

おおよそ6~7日目にはお米が溶けてきて、液体状に変化するそうです。

 

 

この時の酒母室の温度は3.4℃。
部屋全体がしっかりと冷えておりました。

やはり低温での仕込みにこだわっているので、原料から醸造環境まで抜かりなく冷やすことを徹底してました!

 

 

こちらは蔵で一番大きなタンク。
料理酒なども造っているそうで、たくさん造ってこちらのタンクに貯蔵しているそうです。

また冬季の醸造時にはこちらのタンクに仕込み水を溜めておき、配管を経由して先ほどのウッドソンに接続し、洗米を行っているそうです。
仕込みに使用している井戸水は通年で16℃ほどだそうで、冬場にしては温かく、タンクに溜めて冷やしてあげることでお米の温度よりも低くなり、洗米時にお米が割れづらくなるそうです。

また水の温度が高いとお米があっという間に吸水してしまうため、温度が低い方が吸水量をコントロールしやすくなるとのことでした。

 

 

こちらはタンクの温度をコントロールできるサーマルタンク。
こだわりのお酒を仕込むタンクになります。

通常の温度制御無しのタンクとの使い分けについて聞いたみたところ、生酛などは温度制御がシビアなのでサーマルタンクが向いていて、またシングルナンバー酵母(数字が一桁台の協会酵母)は発酵力が強く、低温での仕込みができないと瞬く間に発酵が進んでしまい辛口のお酒になってしまうため、こちらも同様にサーマルタンクが向いているそうです。

低温でゆっくり発酵させた方がカプロン酸エチルなどの香気成分が出やすいため、香りの強いお酒を造りたい場合も同様にサーマルタンクが良いとのことでした。

 

 

お酒造りのこだわりについて、綺麗な酒質を目指しているけれども、薄すぎず味をしっかり引き出すことを意識しているそうです。
特にグルコース濃度は重要だそうで、日本酒度が高くてもグルコースがある程度残っているとインパクトのあるお酒になるそうです。

またカプロン酸エチルを多く生成する協会18号酵母やM-310酵母を使用しているそうですが、世の中的にカプ系のお酒は甘いものが多い中で、吉本さんは日本酒度が高めでキレの良い、飲み飽きしないカプ系のお酒造りにも力を入れているそうです。

まさにブログの冒頭に書いた通り、試飲して感じた甘くなくキレの良いカプ系の味は意図して造られたものだったということが分かりました!
甘いお酒は飲み飽きてしまうことがあるので、長く飲めるように計算し尽くされた設計になっているのですね。

また、キレの良いお酒の造り方については、
「米の出来が毎年違うので造りながら微調整して、汲水の量や仕込温度、醪の管理温度を変えたりしながら、甘みと酸味のバランスを取ることで造っている。」
とのことでした。

 

吉本さん自身は7号酵母のお酒を、造るのも飲むのもお好きだそうです。
聖酒造では生酛造りのお酒で7号酵母を使用しているそうですが、様々な方に親しんでもらえるようにフルーティーでジューシーな造りに寄せているとのことでした。
生酛造りだけれども言われないとわからない、そんなライトな造りを意識しているそうです。

 

 

タンク内で発酵中のお酒の香りを嗅がせて頂きました!

こちらは7号酵母を使用した純米大吟醸を仕込んでいるタンクで、香りはまるでパイナップル!
冒頭に記載したように、お店での試飲時にも感じた特徴的な香りですが、通常の7号酵母由来の香りとは異なった香りに感じ、聞いてみると、
「蔵に住み着いている酵母が混ざって、この香りになっているのではないだろうか」
とのことでした。

 

 

こちらは醪の圧搾機、通称・藪田(やぶた)。
ちょうど蔵の方が、搾った後に残った酒粕を剥がして清掃を行っている最中でした。

上槽時、タンクから藪田へは輸送用のポンプによって配管を通っての供給が可能だそうです。
そして藪田が置いてあるこの建物は冷蔵部屋になっており、5℃に保たれているため、搾っている最中もお酒の劣化が最小限に抑えられるようになっていました!

① 米麹や仕込み水の冷却
② 酒母室の冷蔵
③ サーマルタンクでの低温発酵
④ 冷蔵部屋での圧搾
など、醸造工程すべてにおいて冷蔵管理を徹底しており、お酒を温めずに上槽までたどり着くフローになっていて本当に凄かったです!

以前に下記ブログでも記述しましたが、
「温度が高いとガスが外に出ていってしまうので、ガス感の強い味わいを保つにはお酒を冷やすことが重要」
になります。

とにかくお酒を冷やす!
これを徹底しているからこそガス感の強いお酒が造られるのだなと分かりました!

 

参考
◇炭酸ガスの溶解度とお酒の味わい
(2023年12月20日アップ)
https://nadaya.love/column/tansangasu/

 

 

藪田で搾った直後の酒粕を味見させて頂きました。
これまでに食べた酒粕とは比べ物にならないくらい、香りが強くて凄くフルーティーでした!

 

 

ちなみにこちらの右側に写っている建物が、藪田が入っている冷蔵部屋になります。
趣のある、歴史を感じるレンガ造りの建物ですが、内部は細心の設備で満たされていてビックリ!

 

 

こちらは瓶詰め室。

奥に見える機械がイタリア製の瓶詰め機。
蔵人が念入りに瓶の洗浄作業を行っている最中でした。
瓶詰め機も格好良いけれど、蔵人の真剣な後姿も格好良いです。

 

 

見学を終え、試飲をさせて頂きました!
「HIZIRIZM」と「かんとうのはな」を中心に、聖酒造のお酒を隅から隅まで頂きました。

「HIZIRIZM」はフルーティーな香りとガス感の強さ、旨味がブワッと広がる派手な味わいのものが多く、「かんとうのはな」はすっきりした旨味と心地よい酸味が味わえる、華やかさを持ちつつも落ち着いた味わいのお酒が多いように感じました。

全体を通して、やはり重たくない辛口のカプ系のお酒が造れるのは本当に凄いなと思いました。

そして、HIZIRIZMの酒母酒には驚かされました。
パイナップルやグレープフルーツを思わせる爽やかな香りと、日本酒度-100とは思わない甘酸のバランス、お米の旨味と炭酸の爽快感が見事に融合した、
「これぞリッチな日本酒スパークリング!」といった味わいのお酒。
アルコール度数も5%なので、ずっと飲めます(笑)

全体的に低温仕込みならではの香りの良いお酒が多い印象を受けました。
通常、香りの良いお酒はワイングラスで飲むと映えることが多いですが、聖酒造のお酒はカップで飲んでも香りがはっきりとわかり、なおかつ味がしっかりとしているので、むしろカップやお猪口などで飲んで映えるお酒なのでは?
とも感じました。

 

「酒器の選び方をもっと考えないといけないな!」
と勉強できた、とても貴重な試飲会でした。
沢山ごちそうさまでした!

 

 

最後に吉本さん、そして社長の今井健夫(いまい たけお)さんを交えて記念撮影。

華やかで味が濃く、キレも良い、ガス感の強い、素晴らしくバランスの整ったお酒を数多く造る聖酒造。
他の酒蔵のどのお酒とも異なる素晴らしい酒質を実現しつつも、凄い事をしている雰囲気でもなく、淡々と自身のお酒造りについて語る職人気質(?)の吉本さんが印象的でした。

今井さんと吉本さんは同い年だそうで、まだまだ若くとても活力的なので、これからもどのような革新的な日本酒を造ってくださるのか、とっても楽しみです。

 

今井さん、吉本さん、蔵の皆様、お忙しいところ見学のお時間を頂き、ありがとうございました!

 

 

執筆者・ヒデ