酒蔵見学④ ~長野県・伴野酒造~
2023年某日、長野県佐久市にある伴野酒造を見学させて頂きました。
言わずと知れた、華やかで滑らか、凛とした印象の「澤の花」、
白ワインのようにお洒落で甘酸っぱい「Beau Michelle」、
これらの日本酒を製造する酒蔵として有名ですが、もう一つ有名なのが、
「The Beatlesが流れる酒蔵」というエピソード。
この噂は本当なのか?
潜入してまいりましたので、レポートいたします!!
それでは伴野酒造を巡るMagical Mystery Tour、スタート!!
到着して、まずはご挨拶。
写真中央が、伴野酒造の専務兼杜氏の伴野貴之(とものたかゆき)さん。
伴野さんから伴野酒造の概要について教えて頂きました。
現在の佐久市はかなり広域であり、酒蔵の数が11蔵と、とても多いエリアになっています。
そんな日本酒造りが盛んなエリアにある伴野酒造の創業は1901年。
それ以前は、大正時代から米問屋を営んでいたそうで、伴野さんは6代目に当たります。
伴野さんが酒蔵に戻ってきたのは、2002年だったそうで、その頃は焼酎が人気の時期でもあり、日本酒は全体的に苦戦傾向だったそうです。
2007年頃に会社敷地内に蔵を小さく立て直し、現在まで少しずつ設備を整えながら今に至るとのこと。
課題を解決しながら着実に進めていく中で、現在の酒蔵としての設備や造りの内容は理想に近づいてきたそうですが、まだまだ進化するそうです!
楽しみですね!
求める酒質は、
「品があり、芯があり、凛とした佇まいで、長く飲み続けられる心地よさがあるお酒」だそうで、まさに澤の花ブランドのお酒のイメージそのものですね。
そして重要なこととして意識していることは、
「どのようなお酒を造りたいのか」
「どのような酒蔵でありたいのか」
だそうです。
「自分の造りたい酒を造る」確固たる理念を持って酒造りを行うことが大事とのことでした。
伴野さん自身、以前は山田錦や雄町などの県外産酒米を使っていたこともあったようですが、現在では地元・長野県の酒米でお酒造りを行っております。
凛とした味わいの澤の花ブランドとは一線を画す「Beau Michelle」は、現在の代表(伴野さんの父)が役30年前に立ち上げたお酒で、コンセプトは「新しい飲み手の開拓」。
日本酒が苦手な方にも喜んでいただける「Beau Michelle」は、一口飲むと
「これ日本酒なの?」と言われるほどの比類ない味わい。
長い間工夫をしながら今に至るので、細かな詳細は企業秘密とのこと。
まさにMagical Mystery なお酒というわけですね。
そして蔵見学へ。
造りの順番通りにご丁寧にご説明頂きました。
洗米機はもう15年も使い続けているそうです。
10kgずつ2分間ルーティーンで洗うそうで、多い時には1日で500㎏ほど洗うそうです。
能力を上げて洗う機械もあるそうですが、米の吸水を細かく調整するには10kgずつの洗米が最適とのことで、洗って吸水が終わった後はお米10㎏が13㎏ほどになるそうです。
長い時は3時間近くも洗米をすることもあるそうですが、苦労も厭わない姿勢、頭が上がらないですね。
いつも美味しいお酒をありがとうございます!
「お酒造りはどこか一つにこだわりが強くても駄目で、全体的な工程のレベルを高くしないと理想には近づけない」
と仰っていました。
100点を目指すイメージを常に忘れないようにしているとのことですね。
洗米の後は、蒸米の工程です。
酒造りの期間中はほぼ毎日、蒸しがあるそうで、朝早くから作業をして朝の8時過ぎに米が蒸しあがるようにしているそうです。
伴野さんは欲しい甑があるそうで、次は甑を入れ替えたいと仰っていました。
こちらは放冷機。
蒸した米を冷やす為の機械です。
こちらは7年ほど前に入れ替えたとのこと。
ステンレスで出来ており、毎日水洗いをして、清潔に保っています。
新品同様に見えるほどの清潔感。
こちらは放冷機の出口。
放冷機出口からエアシューターでタンクまでお米を運ぶ蔵元さんも多いそうですが、こちらでは出口から桶にお米を入れるようにしており、全て担いで運びます。
エアシューターの中の洗浄よりも桶の洗浄の方が洗いやすく、効率が良いとのこと。
不安要素は全て無くす。
酒質に影響を与える全ての要素を細かく分析する完璧主義で研究熱心な姿勢。
本当に凄いです。
ここは麹室。
麹造りは酒造りの中では最重要工程の一つ。
近年の働き方改革等で自動の製麹機もあるそうですが、超高級外車が買えるほどのとても高価な機械だそうです。
伴野酒造では、製造スタッフの泊まり込みは無い為、深夜の仕事や管理は伴野さんが1人で行っているとのこと。
多い時は1時間半ごとに起きて温度をチェックしているそうです。
今はスマホで温度が見られるので、昔よりは楽になったそうですが、ぐっすりは寝られません。
それだけ麹造りは重要な工程だということですね。
伴野さんはご自身のことを「不器用な小心者。」と言っていましたが、「頑固な職人気質の忍耐強い堅実な方」という印象です。
こちらは仕込み室。
お酒になる前の醪(もろみ)が発酵するタンクが置かれており、室温は冷房で6℃に保たれています。
造り終盤の時期でしたので、残りの仕込みはBeau Michelleの醪が大半とのことです。
そして、あの噂は本当でした!!
部屋に入った瞬間に聞こえてきた、耳に馴染むあのサウンド!
ルーフトップ・コンサートの情景が浮かぶあの曲!
The Beatlesの「Get Back」が流れていました!
音楽を室内に流すことで振動が生まれ、お酒の味に良い影響が出るとのこと。
流れていない中での醪よりも、音楽の流れている中での醪の方が良い味だった過去の経験から今でも変わらず継続しているとのことです。
ちなみに「Beau Michelle」という名前は、The Beatlesの楽曲「Michelle」が由来とのことです。
こちらは圧搾機。
醪を搾って、酒になる瞬間です。
こちらの圧搾機も16年前に替えた機械、佐瀬式の自動圧搾機です。
沢山の酒蔵さんが様々な工夫をされているのが、こちらの工程ですが、伴野酒造でも細心の注意を払ってお酒を搾っています。
とにかく綺麗に掃除をするのが一番。
圧搾機もとても綺麗でした。
こちらは搾った後のお酒が入るタンクと、その後にろ過をして瓶詰め前のお酒が入るタンク。
伴野酒造では搾った後、4日か5日で瓶詰めとなるので、こちらのタンクに搾ったお酒が入っているのはほんの数日ということですね。
お酒の温度を速やかに下げて、フレッシュさを保てるタンクになっているそうです。
こちらは瓶燗機。
3年ほど前にオーダーメイドで作った瓶燗機だそうです。
生で瓶に詰めたお酒を湯煎で加熱殺菌する機械、色々試行錯誤をした結果、
「伴野酒造のお酒には湯煎瓶燗が一番良い」
とのことになり、労力も考えてこちらの機械を入れられたとのことです。
湯煎瓶燗をすることにより、酒に張りが出て、またさらに酒が良くなったと仰っていました。
料理でもそうですが、火加減によって大きく味も変わりますよね。
こちらの瓶燗でも日本酒造りの最後の工程の工夫が見えました。
「道具や機械も、自分の蔵と自分の酒造りに合うものを使いたい」と伴野さん。
お酒の味を追求することに抜かりが無く、また清潔で使いやすく蔵人の作業効率も意識して設備を選んでいることに、こだわりを感じました。
伴野さんだけでなく、蔵人の皆様も時間をかけて道具類を綺麗に洗浄や掃除されていました。
設備だけでなく、白を基調にした建物全体がとても綺麗で、とっても清潔感のある酒蔵でした。
最後に記念撮影。
伴野さん、伴野酒造の皆様、見学のお時間を頂きましてありがとうございました!
とにかく蔵人の皆様が一丸となって一生懸命掃除をしている姿が印象的で、これが理由で綺麗で凛とした印象のお酒が出来上がるのだなとしみじみ感じました。
また伴野さんに、造りや経営などの苦悩を抱えながらも試行錯誤して着実にお酒造りを進めてきた足跡について語って頂き、蔵人の努力や苦労の結晶が瓶詰めされて我々の元へ出荷されているのだなと感じ、今まで以上にじっくりと味わってお酒を飲む感覚が身についたような気がしています。
こだわりのお酒を沢山お伝えできるようにこれからも頑張ります!!
執筆者・ヒデ